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【下関】触れるほどに惹かれる木の器のスペシャリスト/ムクロジ木器

思わず触れたくなる“R”を描く
木工職人に会ってきた

山口県のタウン情報誌トライアングルにて、編集スタッフが見つけてきた“山口の逸品”を紹介しているコーナー『made in YAMAGUCHI』。

2020年5月号で紹介したのは、木の器の職人、『ムクロジ木器』の辻翔平さん。
作品はもちろん、辻さん自身の魅力もありすぎて、もう本誌の中だけでは語りきれませんでした!
というわけで大幅にはみ出した取材情報を、ここでたっぷりとご紹介しちゃいます。(笑)

辻さんが職人になるまで。

工房『ムクロジ木器』と下関

こだわりがつまった器

1)辻さんが職人になるまで。

辻さんは“挽物”という伝統技術を使い、美しい曲線を持つ木の器を作る職人です。
挽物とは、ろくろで木材を廻して、そこに刃物を当ててお椀などを削りだす技術のこと。

辻さんがこの挽物に出会ったのは、まだ福岡で大学に通っていたとき。
インターンシップで訪れた木工所で運命の出会いを果たし、その魅力にとりつかれた辻さんは、実習が終わった後もその木工所に通うようになります。

そうして技術を身に着けてきた辻さん。
卒業後はそのまま職人になると思いきや、大学の恩師のアドバイスから一旦就職の道へ。
選んだ先は、家具の本場と呼ばれる福岡県大川市でも最大手の家具屋さんでした。
就職氷河期だった当時、もう募集をしていなかったところに電話で直談判し、社長面接を経て見事に就職を勝ち取ったのだそう(笑)。

ここで辻さんは、胃潰瘍になるほど悩みながらも営業マンとしてバリバリと働き、営業成績もトップを収めるほどに!
「お客さんと電話で大喧嘩したこともあります。まるで昭和の時代の営業でしたね」と笑う辻さんですが、この営業経験でお客さんのニーズや物の売り方を学んだのだそうです。
そうして5年が経ったころ、「やはり自分の手で作りたい」と独立を決意し、ついに木工職人の道へ漕ぎ出します。

奇しくもそのときに子どもを授かったと知った辻さん。
奥様が安心して産める環境、そして子どもたちの“地元”と呼べる場所を作ってあげたいと、奥様のご実家がある下関へとやってきたのでした。

2)工房『ムクロジ木器』と下関

職業訓練校などに通ったのち、最初に工房を構えたのは、奥様のご実家、狗留孫山のお膝元。
ちなみにその時の住所、“杢路子(むくろじ)”が工房の名前の由来!
この『ムクロジ』は木の名前でもあり、その漢字は無患子…“わずらわないこ”と書きます。
地名の“木工の路の子”、木の“わずらわないこ”…その2つを併せ持つことから、辻さんは『ムクロジ木器』の名前を決めたのだそうです。

この下関で、トラックや機械を譲ってくれた方や、今の工房を建てるときに木材を安く融通してくれた方など、協力を惜しまない多くの人たちに出会った辻さん。
余談ですがその経験から、下関愛がハンパないんです(笑)。

「下関に移住したいと考えている木工職人の相談にのったり、空き家を持っている人から相談を受けたり…もうムクロジ不動産(無料)ですよ(笑)。」と辻さん。
新規移住者と地元の人との橋渡し役も買ってでているのだそうで、地元の人からも、移住者の後輩からも慕われている様子が伺えます。

2か所目である今の工房はお仲間と集まることが多いほか、シャッターが開いていれば、地元の方がのぞいてお話をしていくことも。
「お野菜や魚のおすそ分けをいただくことも多いんです。あんたんとこやったら、集まるけぇ食べるじゃろ!って(笑)。」と言う辻さんの周りには、絶えず人の輪が広がっているようです♪

ちなみに作品の一部に下関の木を、しかもご自身が取ってきたものを使うようになったのも、地元の山の所有者さんとの出会いから。
「木のルーツ…この木は斜面に生えていてね、なんて語ることができるのは良いなぁと思って」と語る辻さんですが、木を伐り出して製材し、使えるように乾かして…と、かなりの手間がかかります。

最近ようやく作品に使えるようになってきたそうで、写真の浅椀などにも使われています。

寄せ木のコップ各¥5,500(税別)、四寸浅椀各¥5,000(税別)

3)こだわりがつまった器

そんな木へのこだわりを教えてくれた辻さんだから、当然器の製作についてのこだわりもハンパありません!

工房においてあるろくろは、木を削るときに真空状態にして木材を吸い付けるもので、辻さんこだわりの機械。
大分の職人さんに頼んで作ってもらい、自身でトラックを運転し、下関まで運びました。

しかも木材を削る刃物も、ちょうど良い厚みのものを求めて削ったり、溶接したり…道具までも自分で製作しちゃっているんです!

そうしてこだわった道具で削り上げるのは、美しい曲線=rを描くお椀やコップ。
辻さん曰く「果実のように内側から膨らんだ丸み」を目指しているそうで、出来上がった器は思わず撫でたくなるような優しい曲線を描きます。

と、普通の木工職人さんであれば、この後の表面加工などは別の方へとバトンタッチするハズなのですが…辻さんはご自身でぜ~んぶやっちゃいます(笑)。

実は表面加工の技術は大学で学び、自身の研究テーマにも選んだもの。
漆器の代わりになるように、と5層も塗り重ねるので、水も全く染み込まないのだそう!
しかも、木目の美しさはそのまま。

辻さんの代表作品の1つである寄木のコップも、木そのものの色を活かすからこそ、美しい色合いが楽しめます。
ちなみにこの寄木も辻さんご自身が合わせたもので、よく見ると違う素材なのに木目が合わせてあるんです…!

取材スタッフがもう、色々驚きっぱなし(笑)になった『ムクロジ木器』。
その器と辻さん自身に直接会うことができる「オープンファクトリー」を月1回開催されています(※現在、コロナウイルス対策から休止中)。

見学やワークショップ、作品の販売も行われているので、開催時にはぜひ足を運んでみてくださいね!
☆開催日等はfacebook等で告知あり。

ムクロジ木器

☎090-5084-4493
所》下関市豊浦町大字宇賀本郷4704
●第4土曜にオープンファクトリー
 ※変更の場合あり、SNS要確認
※その他訪問は要事前予約
☆Instagram(@mukurojimokki)、facebookあり


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